焦点距離1000mm超のシステムとしてC11を長らく使ってきて、その後に40cmドブソニアンを少し試していたのだが、思うところあって全面的にシステムを更新した。基本的なコンセプトは、必要十分な口径とシーイング限界の分解能を確保しつつ、可搬性と運用性をできるだけ高めること。
Optics: Celestron C8-XLT, Starizona SCT corrector (F7.1)
Mount: ZWO AM5, ZWO TC40
Camera: ZWO ASI1600MM-cool (FOVW=0.7°, FOVpp=0.55″)
Guider: ZWO ASI120MM-mini, TS OAG-9
Misc.: ZWO ASI Air plus, Celestron Dew Heater ring, ZWO EAF, Bob’s knobs, Manual FW
鏡筒は光量と焦点距離を確保しつつコンパクトにするため20cm級カセグレン系とした。SCTを選んだのは対抗馬RC8だと長大なバックフォーカスによる取り回しの懸念があったからで、EdgeHDではなくノーマルのC8なのは軽くて安くて手持ちの補正レンズがあるから。赤道儀にAM5を選んだのは軽量かつカウンターウェイトなし運用ができ、さらにASIAIRとの組み合わせでの運用性が保証されていることから。
まあ尖った所のないシステムで、ZWO社にロックインされてしまっている感もあり面白くないという自分の中の声がしないでもない。一方で、そういう偏屈なこだわりを捨ててみれば本当に良いシステムで、今までの苦労は何だったんだと思うほど。積み込みが楽で、セットアップも速く、撮影中も楽かつ安定しており、十分な成果が出せる。システム構築時の最大の懸念事項は追尾精度だったが(本システムはZWO社推奨のFOVpp 1″以上をかなり割り込んでいる)、実際に使ってみると5分露出でも星はほぼ点像で問題なかった。
本システムの運用上の最大の注意点は転倒させないことだろう。仕様上AM5は搭載重量13kgまでカウンターウェイトなしで運用できるが、web上では同等のシステムでの転倒事故例がみられる。軽量化のためにカウンターウェイトなしで運用するならば、その際に最も重要なことは三脚の向きだと思う。一般的にドイツ式赤道儀では不動点が三脚中心よりも天の極にずれているので、三脚は天の極に向かって足を伸ばして設置する(ex. 北半球では各脚が北、南東、南西)。これに対してAM5のようなカウンターウェイトのないドイツ式赤道儀では、この不動点のずれもさることながら鏡筒を東西に振ったときの重心の東西方向への移動がかなり大きい。これによる転倒を防ぐためには三脚の南北方向を従来とは逆向きに設置するべきで(ex. 北半球では各脚が南、北東、北西)、本システムではこの向きで設置すれば三脚を縮めた状態でも静的には転倒しないことを確認している。あとは、フィールドで不整地に設置する際に各脚を持ち上げて荷重を確認することと、風などの動的な荷重に対する安定性を高めるため脚を伸ばしてストーンバッグを活用する事だろうか。