はくちょう座デネブのすぐ東隣りの北アメリカ星雲と、そこから暗黒帯を挟んで右側のペリカン星雲。これ昔からずっと「どこがペリカンか分からん」と思っていたが、今ようやくわかりました。この写真だと左向きですね。
写真から見て取れるとおり実際はこれらの星雲は単一のHII領域(Sh2-117、距離2500光年)で、手前にある暗黒星雲のため二つに分かれて見えている。近年の研究によればこの大きなHII領域を電離して輝かせているのは暗黒星雲の裏側に位置する恒星(J205551.3+435225)だそうで、北アメリカ星雲に対してフロリダ東岸に相当する位置にあるため通称バハマ星と呼ばれる。一般にHII領域を形成するような星は重量級で表面温度が高いため青く見えるが(例:カリフォルニア星雲の ξ Per、2020/9-10撮影)、このバハマ星は暗黒星雲による減光のため赤く見える。このメカニズムは夕焼けと同じだが、本来は青い星が赤く見え光量は1/10000倍に減衰するほどの「夕焼け」であり、もし減光がなければバハマ星は普通に肉眼で見える明るさ(3.6等)だそうである。
兵庫県西部、Star71II + 6D(HKIR改) + SWAT350、NBZフィルタ。Sub露出時間1min、2021/7/19~8/5の合計590枚、10時間弱。ようやくの梅雨明けで写真の更新はひと月ぶりとなる。この写真は梅雨明け記念 兼 機材テストくらいの位置づけで、テスト対象はIDAS社製NBZフィルタ。このフィルタは最近流行りのデュオナローバンドフィルタで、Hαの赤とOIIIの青緑の近傍各々12nmずつを透過するため単板カラーカメラでもAOO合成的なカラー画像が一発で得られる。光害地かつ月も大きい悪条件にもかかわらずよく写るものだと最初は思ったが、露出時間を増やしていってみるとその割にはSN比がなかなか上がらない印象。色合いについては普通に撮った写真(2019年撮影の北アメリカ星雲)とはかなり違うが、ナローバンド故に「正しい色とは何か」がもはや分からないので、これで良しとする。